縫合糸の選び方

縫合糸は、基本的に使用用途から選びます。 脳神経外科、一般外科、眼科、口腔外科など、さまざまな種類の手術で使用されています。そのため、縫合糸の種類は、縫合または結紮する組織や臓器の種類や厚さにより異なります。

また用途によっては、以下のような糸の特徴を考慮する必要があります：

• 機械的特性：強度、滑りやすさ、弾力性、柔軟性。
• 糸の構造と素材:モノフィラメントまたはマルチフィラメント、吸収性または非吸収性など。
• 針の種類と形状

B.Braun社のポリプロピレンとポリエチレンのモノフィラメント縫合糸

縫合糸を選択する際に考慮すべき主な機械的特性は、その強度、滑りやすさ、伸縮性、柔軟性の4つです。

• 強度：縫合糸の引張強度を指します。 基本的にその太さと素材で糸の強度は決まります。
• 滑りやすさ：損傷を抑えながらの組織内の糸の滑りやすさを指します。
• 伸縮性：糸の伸びる能力を指します。
• 柔軟性：結び目の強さと、糸の扱いやすさを指します。

モノフィラメント糸は、単繊維とも呼ばれ、コンパクトな円柱状の1本の繊維からできています。マルチフィラメント糸は、三つ編み、らせん状、ケーブル状の複数の繊維からできています。 以下はそれぞれの糸の長所と短所です：

• モノフィラメント糸：
  • 長所 : 
    • 高い耐久性。
    • 滑りが良いので組織に付着せず抜糸しやすい。 
    • 毛細管現象がないため、糸を介した液体や細菌による感染を防げます。
  • 短所:
    • 糸が硬い。
    • 形状が記憶される。
• マルチフィラメント糸：
  • 長所 : 
    • 高い柔軟性。
    • 結び目が強い。
    • 形状記憶性が低い。
  • 短所:
    • ワイヤーの表面が平でないため、毛細管現象を引き起こす。
    • モノフィラメント糸より伸縮性に劣る。

Ethicon社製丸針付きマルチフィラメント糸

手術針は一般的にステンレス製ですが、縫合糸にはさまざまな素材が使用されています。 合成素材であることが多く、吸収性と非吸収性のものがあります。 以下は、一般的に使用されている吸収性・非吸収性の素材です：

• 吸収性素材 :
  • ポリグリコール酸
  • ポリジオキサノン (PDO・PDS)
  • ポリグラクチン910

これらの吸収性縫合糸は、素材の種類や糸の太さなどにより、吸収に必要な期間がそれぞれ異なり、60日～200日以上と差があります。

• 非吸収性素材 :
  • ポリプロピレン製
  • ポリアミド
  • ポリエステル
  • 絹

Nanjing Kaihong Healthcare社の湾曲丸針付きポリグリコール酸吸収性縫合糸

針の性能は、強度と刺通性により決まります。

• 強度：通常の使用条件下で針が曲がらない能力。
• 刺通性：組織の損傷を防ぎ刺通する能力。

そのためには：

• 針の湾曲：縫合する部分により、湾曲の度合いが異なります。
• 先端のタイプ:  
  • 丸針：丸針は、組織の損傷を最小限に抑えることができます。 心臓、血管、女性の体の組織、腹膜、消化管、泌尿器など、傷つきやすくデリケートな組織に使用されます。
  • 三角針：皮膚、腹壁、靭帯、線維性組織などに使用されています。 このタイプの針は曲げに強く、折れる心配がありません。
  • 披針形針: 刺通性と滑りに優れており、正確な位置に刺入できます。特に消化管や泌尿器、婦人科、腹壁に適しています。
• 針本体の形状には、円形、四角形、三角形などがあります。 

Covidien（Medtronic）社製三角縫合針